『 靴みがき 』
休みの日、家内が掃除をしているうちに、通勤用の靴を磨いた。
まとめて四足。黒二足、茶、エンジ各一足。
あっ、それとオフタイム用のワークブーツ一足は衣替えのため。
靴みがき後、茶色初日、雨・・・・。
磨いたばかりの靴はやはり晴れた日に履きたいが、靴クリームに含まれる油脂成分が、水をはじいてくれるだろうと気を取り直す。
玄関を出ると案の定、雨雫が茶色い靴の上を転がった。
通勤電車の中、よく手入れされている靴は他人のモノでも、見ていて気持ちが好い。
テレビドラマにサラリーマン家庭だと、専業主婦の奥さんが靴を磨くシーンが、・・・なんてのは、20年前の話か、
今時は、ポリの容器(大体黒か黄色だが、)の先っぽにスポンジがついてそれでツヤ出し素材の入った液体を塗りつけてお終いか、
近頃、都心の街に出ないせいか、靴みがきのおじさんや、おばさんを見掛けることが無くなった。
顔や手を黒くしたおばさんの前に、高い位置から見下ろすように座るあの椅子。
今思えば、とても違和感を覚える。
自分はおそらく一生座ることは無いだろう。だがどこかで、あの差別的な階級社会的な、スタイルに位置してみたい自分が居たのも事実だ。
昔は靴を磨いてもらうのに、いくら取られるだろう、と、値段が心配だった。
そこにも、お金持ちと貧しい人の対比を無意識に感じていたのだと思う。
いま自分もサービス業、接客業で生業を立てているので、靴を磨く側の立場感情は少し分かるような気がする。
しかしあの頃お金持ちにしかできない事、お金持ちが格好イイと思った瞬間があったんだろう。
あの椅子に座りたいと思ったのがその時なのだと思う。 (続く)
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